我らがレアル・マドリードには「タランチュラ」という愛称で親しまれている世界的に高い評価を得ている選手がいる。
ベルギー代表でも守護神を務めているティボ・クルトワだ。
我々日本人にとっては記憶に新しい、2018年ロシアW杯でのベルギー戦であのカウンター攻撃のきっかけを作ったあのスローイングをしたゴールキーパーこそがクルトワだ。
そのロシアW杯では最優秀ゴールキーパーに贈られる「ゴールデングローブ賞」を受賞したティボ・クルトワの凄さはなんなのか?
レアルのゴールマウスに鍵をかける長身ゴールキーパー、ティボ・クルトワのプレースタイルや特徴について解説していく。
ティポ・クルトワのプロフィール
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本名 | ティボ・ニコラ・マルク・クルトワ(Thibaut Nicolas Marc Courtois) |
国籍 | ベルギー |
生年月日 | 1992年5月11日(29歳) |
身長 | 199cm |
体重 | 96kg |
利き足 | 左 |
ポジション | GK |
背番号 | クラブ:1/代表:1 |
着用スパイク | Nike Tiempo Legend IX |
経歴 | ヘンク(2009-2011)/チェルシー(2011-2018)/アトレティコ・マドリード(2011-2014)/レアル・マドリード(2018-) |
年俸 | €11,180,000(14億868万円)/週給€215,000(2709万円) |
今や知らない人はいないであろう世界的有名なゴールキーパー、ティボ・クルトワ。
今までプレーしてきたトップリーグで全て最優秀ゴールキーパー賞を受賞したことのある超実力派のゴールキーパーだ。
GKになるきっかけは緊急事態
そんなゴールマウスに頑丈な鍵をかけるクルトワだが、意外にもGKを始めたのはヒョンとしたことからだった。
1992年、クルトワはベルギーのブレーという町でバレーボール選手の両親の元で産声をあげた。
両親がバレーボール選手だったということもあり、自宅の裏庭では姉弟と共にバレーボールの練習に励む日々。
1997年の5歳の頃にはビルゼンVVというチームに加入し、当時は左サイドバックをやっていた。
そう、昔はフィールドプレーヤーだったのだ。
1999年にKRCヘンクの下部組織に加入すると、ゴールキーパーが不在だったからという理由で急遽ゴールキーパーをプレーする。
すると、クルトワ少年は好セーブを連発し大会最優秀ゴールキーパーに選ばれた。
急遽プレーして賞をとってしまうあたりは、控えめにいってセンスの塊だと思う。
この後からクルトワはDFからゴールキーパーへとポジション転向を決心した。
レンタル先で開花した才能
2009年には17歳の若さでトップチームデビューしスタメンに定着。
2010-2011シーズンはリーグ42試合で32失点、うち14試合で無失点という好成績を収め、リーグ優勝に大きく貢献した。
このシーズンもクルトワはリーグ最優秀ゴールキーパーに選出され、ヘンクの最優秀選手にも選ばれた。
これだけの活躍をすればヨーロッパのビッグクラブが放っておくわけがない。
数々の名門からオファーがあったが、クルトワはプレミアの名門チェルシーFCのドアを叩くことを決心。
5年契約の移籍金は790万ポンドで移籍すると、その年にマンチェスター・ユナイテッドに移籍したダビド・デ・ヘアの穴を埋めるべくアトレティコ・マドリードへのレンタル移籍が発表された。
背番号はダビド・デ・ヘアがつけていた13番。
アトレティコマドリードには、現在我らが日本のエースでもありマドリディスタの久保建英が所属しているビジャレアルで正ゴールキーパーを務めるセルヒオ・アセンホなどがいたが、リーグ開幕戦で初出場し完封すると、アトレティコ・マドリードの正守護神としてスタメンを張った。
結果その年はリーグ戦37試合に出場し、ヨーロッパリーグでは決勝戦も無失点に抑えて2年ぶりの優勝に大きく貢献した。
1年を通して良いパフォーマンスを見せたことで2012年には1年のレンタル延長が発表された。
2012-2013シーズンもクルトワの快進撃は止まらない。
レンタル元であるチェルシーFCとのUEFAスーパーカップでは1失点に抑えてタイトルを獲得。
アトレティコマドリードの以前の本拠地でもあった「エスタディオ・ビセンテ・カルデロン」では820分の連続無失点を記録した。
同じマドリードに本拠地を置くマドリードダービーとなったコパ・デル・レイ決勝では14年ぶりに勝利。
マンオブザマッチに輝いたクルトワはアトレティコマドリードの17シーズンぶりのタイトルに貢献した。
このシーズンも最優秀ゴールキーパー賞を受賞した。
そして次のシーズンもレンタル延長が決まったクルトワは2013-2014シーズンも安定したパフォーマンスで18シーズンぶりのリーガ優勝に貢献。
1年を通して1試合当たりの平均失点が少なかったサモラ賞を2シーズン連続で獲得すると、2014年にチェルシーに復帰することが決定した。
守護神チェフではなく守護神クルトワになった瞬間
チェルシーに戻ったクルトワは当初長年チェルシーのゴールマウスを守ってきたペトル・チェフとのレギュラー争いに敗れるのではないかと言われていたが、当時監督をしていたモウリーニョがスタメンにリスト入りさせたのはクルトワだった。
シーズンを通してスタメンとしてプレーすると、フットボールリーグカップとプレミアリーグ制覇のタイトルを獲得。
ライバルと言われてきたチェフは翌年にロンドンを本拠地に置くアーセナルFCに移籍したため、スタメンを確固たるものにした。
ここまで毎シーズン何かしらのタイトルや名誉を手にしてきたクルトワだが2015-2016シーズンは良いシーズンにはならなかった。
シーズン最初のチェフが所属するアーセナル戦に敗れるとリーグ戦も結果が振るわず20年ぶりの10位で終了。
クルトワ自身も1シーズンで2回退場したプレミア史上6人目の悪い名誉を獲得してしまった。
しかしそれに奮起したのかなんなのか知らないが、翌年の2016-2017シーズンはリーグトップとなる16試合のクリーンシート(無失点に抑えた試合のこと)を記録してチームもリーグ優勝を飾った。
その年はリーグ年間最優秀ゴールキーパーにも輝きクルトワの復活を世間に知らしめた。
翌年はまたもやシーズン初戦のアーセナル戦で敗れてしまったが、FAカップのタイトルを獲得。
契約が2019年までとなっており、契約更新の話が持ち出されていたが、この時点で我らがレアル・マドリードへの移籍が噂となっていた。
というのも、クロトワは以前から家族が住んでいるマドリードに戻ることを希望していたのだ。
破格の移籍金でレアル・マドリードへ
結果、2018年にはレアル・マドリードへ6年契約の移籍金3500万ユーロで移籍が発表された。
背番号は今まで着けていた13番ではなく25番。
ちなみにこの移籍金は半端じゃない。
当時のゴールキーパーの移籍金最高額は、クルトワが移籍した代わりにアトレティコマドリードが獲得したヤン・オブラクの1600万ユーロ。
それを倍以上も上回るという少し異常な額だったのも大きく報じられた。
だがそれも世界的に評価されているゴールキーパーであること、レアル・マドリードの期待の表れということだ。
しかし、当時レアルにはケイロル・ナバスというコスタリカ代表の守護神がいた。
当初はナバスとクルトワをどう起用するのか、どっちが上か、などという議論がかなりあったが、当時監督のロペテギ監督はリーグ戦にクルトワ、カップ戦にナバスを起用する方針を貫いた。
しかし、成績不振でロペテギが解任されるとカップ戦でもクルトワがゴールマウスを守るようになった。
なお、なんとなく分かるとは思うが、クルトワはマドリードを同じ本拠地とするアトレティコ・マドリードでも活躍した選手だ。
マドリードダービーでどんな仕打ちが待っているかは分かるだろう。
「裏切り者」という意味を持つネズミの人形が大量に投げ込まれたり、異常なほどのブーイングがなり日々たりもした。
移籍した初年度はミスや失点も多く、我々レアルファンからも「大丈夫かこいつ?」と批判を浴びる日々が続いた。
しかし、監督が名将ジダンに変わると、徐々にスタメンの座を取り戻し、2019-2020シーズンは僅か20失点のみ。
サモラ賞を獲得し、エル・ブランコの3年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献した。
PSGからレンタルで加入していたトラオレが退団したことで、背番号を25から1に変更して2020シーズンを戦っている。
ロストフの悲劇はクルトワの手から生まれた
クラブで最優秀選手賞を何度も獲得し数々のタイトルを手にしてきているクルトワだが代表でも安定したパフォーマンスを見せている。
彼が代表デビューしたのは2011年のフランス戦。
当時はシモン・ミニョレというキーパーがいたが後輩クルトワも負けじとスタメンを獲得した。
2014年ブラジルW杯ヨーロッパ予選では全ての試合でスタメンフル出場。
2002年の日韓W杯以来のワールドカップへの切符を手にした。
2016年EURO予選でも安定したパフォーマンスを見せ3大会ぶりの本大会出場を獲得したが、準々決勝でウェールズ相手に3失点してしまいベスト8で敗退。
2018年のロシアW杯では…
我々日本人は思い出したくないが、日本を破りベルギー史上初の3位で大会を終えた。
大会を通じてセーブ数、クリーンシート数共に最多で最優秀GKに贈られるゴールデングローブ賞を獲得した。
決勝に出場しなかった選手がゴールデングローブ賞を獲得するのは24年ぶりの快挙だった。
キーパーが不在だったことがきっかけでキーパーの才能に気付かされ今では我らがレアル・マドリードのせいゴールキーパー。
ゴールキーパー史上最高額の移籍金で加入したことでクルトワ自身もこう思っただろう。
僕クルトワ、こんなことになるとわ!
ティポ・クルトワが使用中のスパイク【ティエンポ レジェンド 9 エリート】
そんなティボ・クルトワのプレーを支えているスパイクがティエンポ・レジェンド9。
このスパイクは元々は攻撃的なプレーをサポートしてくれるようにデザインされたNIKEのティエンポ史上最も軽いスパイクだ。
そして、ソールに配置されているスタッドがカットや急ストップなど優れたトラクションを発揮してサポートしてくれる。
クルトワはGKの中でも足元が優れているキーパーでもあるので、パスやプレッシャーにきた相手をかわすタッチの感触を大事にしながら、スタッドでしっかり芝を噛むことのできるスパイクを選んで華麗なセーブを見せてくれているのだろう。
ティポ・クルトワのプレースタイル
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ティボ・クルトワが世界的にみてもいかに優れたゴールキーパーかということが分かったところで、僕が思う彼のプレースタイルや彼の特徴について書いていこうと思う。
彼を語る上で大事なポイントは以下の通りだ。
- ハイボール処理
- 反射神経を生かしたセービング
- 試合を読む力
それでは1つずつ解説していく。
ハイボール処理
まずクルトワのプレースタイルや特徴を話す時に絶対に外しちゃいけないのが絶対的なハイボールの処理能力である。
クルトワの身長は199cm。
控えめに言ってめっちゃデカい。
その為というべきか、当たり前というべきかハイボールの処理は基本的に困らない。
フィールドの選手はインプレー中やセットプレーでゴール前にボールを放り込む時に基本的に2種類のボールを蹴り分ける。
中央への早いボールとファーサイドに点で落とすようなボールだ。
背が高いディフェンダーやゴールキーパー相手には後者のようなボールを蹴って相手を揺さぶる、なんてセオリーがあったりするが(もちろん中央へのライナー性のボールが有効な場合もある)なんせ199cmである。
地面からクロスバーまでの高さが2.44mということを考えてもほぼ2mの身長があるクルトワはジャンプすればクロスバーを優に超える高さまで手が伸びる。
相手がどんなに点で落とすようなボールを蹴っても、クルトワが飛び出してボールに触れる範囲内ならなんの脅威にもならないのだ。
そしてフィールドの格闘技とも言われているサッカーではGKと相手選手との接触は避けられない。
ハイボールを処理しようとしても相手だって点を取りたいので競り合ってくる。
クルトワは一見細くてすらっとしているように見えるが、体重は96kgもある。
控えめに言ってめっちゃガタイが良い。
ハイボール処理中に相手がぶつかってきても簡単にはブレないのでボールを取りこぼしたりすることもない。
日本がロシアW杯で敗戦した試合もクルトワはハイボールを悠々とキャッチしている。
あそこまで飛び出すことができてハイボールをキャッチされたら、相手チームは何かデザインされたセットプレーを準備してレアル戦に挑まないといけないだろう。
だが、あまりそういうチームはラリーガではみない。
バルセロナくらいだろうか。
僕が監督なら相手キーパーがクルトワと知ったら試合までの1週間で何個かのセットピースを準備するが…
とにかくクルトワのハイボールの処理は現役選手の中でも屈指であることは間違いない。
反射神経を生かしたセービング
次にクルトワを語る上で欠かせない特徴が並外れた反射神経を生かしたセービング力だ。
なんとなくこんなイメージを持っている人はいないだろうか。
デカいやつはトロい。
僕は少なからずそう思っている一人だ。
正直僕もデカいゴールキーパーなんて何度も対戦してきた。
ゴールキーパーを背が低い選手がやっているチームはあるけどあまりみないくらい。
でも僕の中ではデカいやつより小さめのGKの方が止めるイメージがある。
デカくない選手の方が機敏で反射神経がいいと思うからだ。
だが、クルトワは違う。
デカいくせに機敏で反射神経がめちゃくちゃいい。
相手が至近距離でシュートを打ってもしっかり反応して外に弾き出す。
味方に当たってコースが変わっても素早い反応で対応する。
スルーパスには積極的に飛び出してチャンスの目を詰む。
YouTubeなどでスーパープレー集をみても、「それ止めれちゃうの!?」ってシーンが何回も出てくる。
悔しがる相手FWを見ながら「サッカーやめようかな?ってならないのかな?」って何回も想像したことがあるくらいだ。
しかもクルトワは高身長だからってのもあるかもしれないが手足がめちゃくちゃ長い。
他のGKが届かないであろうコースに飛んだシュートもクルトワなら届く。
というか、横っ飛びしたら届いてしまうのだろう。
冒頭にも書いたが「タランチュラ」とかいうニックネームがあるくらいだ。
Jリーグでも活躍したシジマールは「クモ男」と言われていたが、それよりもなんか強そう。
つまりクルトワがゴール前で手足を広げて立ってるだけで、シュートコースがほぼないように見えるのだ。
PKの時にカメラに映る映像を見ていると、僕ならキッカーを降りる。
しかも反射神経がいいとなるともうどうしたらいいか分からなくなるのではないだろうか。
ちなみに、よく背が大きくて手足の長い選手は低いシュートが弱点と言われている。
そして、案の定クルトワも低いボールや股を狙ったシュートが苦手だ!っていう人も多い。
正直、僕は全くそう思わない。
クルトワは低いボールへの対応も反応も素早い。
GKをやってれば一生無失点で選手人生を終えるなんてことは正直、無理。
そんな中で数少ないクルトワの失点シーンを見たら低めのシュートだったってだけなのではないだろうか。
だってハイボールは絶対に負けないし、横への反応はピカイチ。
日本代表の原口と乾がW杯で決めたゴールに引っ張られすぎなのではないだろうか、とすら僕は思っている。
試合を読む力
確かにクルトワは高身長で反射神経がいい選手だが、彼は何も身体能力だけの選手ではない。
クルトワの強みは試合を読む力に優れているところである。
彼はキャッチした後の選択がスマートな選手だ。
スローイングやパントキックでこれまでも数々のチャンスを作り出してきた。
何回も言って申し訳ないが、ロシアW杯の日本戦で見せたカウンター攻撃、通称「ロストフの14秒」。
あのプレーに全ては詰まっていると思う。
コーナーキックをキャッチしたクルトワは前線に残っていた味方の人数と前がかりになっている日本代表を確認すると、素早く、且つ正確なスローイングでケヴィン・デブルイネにボールを渡した。
ボールスピードも完璧だった。
悔しいが、あの失点シーンはベルギー代表のみんなが完璧なカウンターだった。
ちなみに、クルトワは試合終盤のコーナーキックにも積極的に参加するキーパーでもある。
長身なので当たり前っちゃ当たり前かもしれないが、今人数をかけた方が良いと判断したら指示がなくてもセットプレーに積極的に参加する。
実際、バレンシア戦の後半アディショナルタイムにコーナーキックからゴールを狙い、ベンゼマのゴールをお膳立てしたりもした。
最近のサッカーでは、センターバックから攻撃が始まると言われるが、クルトワはキーパーから始めることができる選手ということ。
クルトワがいるだけで相手は簡単なシュートミスやパスミスが致命的になるのだ。
そう、日本代表が食らったカウンターのように…
世界屈指のGKに助けられているマドリー
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数々の最優秀選手賞を獲得し、今や世界屈指のゴールキーパーに君臨しているティボ・クルトワ。
FIFAランク1位であるベルギー代表の守護神であり、我らが名門レアル・マドリードの守護神でもある。
彼がなぜ世界が認めるゴールキーパーなのかは読んでもらった通りでもうわかると思う。
- 絶対的なハイボール処理能力
- 反射神経を生かしたセービング力
- 手足の長さを生かした守備範囲の広さ
- 試合の流れを読む状況判断力とセンス
よくクルトワは足元の技術がないと言われているし本人もそう言っているが、正直そんなことは全くない。
積極的にビルドアップにも参加し、危ないプレーもしないので変なミスから失点することはない。
20-21シーズンはラファエル・ヴァランやセルヒオ・ラモスといった主力2人が中々試合に出場できず、ミリトンとナチョが踏ん張ったとはいえ守備に不安があった。
しかし、クルトワが逆にそれで奮起したのか、好セーブを連発!
あぁ!やばい!失点する!!って思った時には必ずと言っていいほどクルトワがボールに触って防いでくれた。
そして後ろからの声かけも素晴らしく、無観客だからこそ分かるGKの声の大事さ、そして寡黙そうに見えるクルトワの試合中の偉大さ。
21-22シーズンの我らがエル・ブランコは一気にセンターバックの主力を失ったことであたふたしてしまうかもしれない。
ナチョやミリトン、そして新戦力のアラバが頑張ってくれるとは思うがクルトワがいればそもそも心配する必要ないのかもしれない。
チームが歳をとってきているとは言うが、クルトワはまだ29歳。
中堅として、そしてこれからのチームを引っ張っていく選手として後ろから白い巨人を動かして強いエル・ブランコに再生してくれることを心から祈っている。