世界でもトップレベルのタレントを擁し、常に勝ちを求める我らがレアル・マドリード。
しかし、欧州トップリーグのクラブチームが相手では有能な選手を11人揃えてただ試合を行うだけでは簡単に勝つことはできない。
才能あふれるエル・ブランコの精鋭達をどう活かせば相手をねじ伏せることが出来るのか、どういう戦術を取ればその才能をふんだんに活かすことが出来るのかをジダン監督は髪の毛がなくなるくらい毎日頭を悩ませている。
ここでは2021年1月10日に行われたオサスナ戦を参考に、レアル・マドリードの基本フォーメーションやシステム変更などについて徹底解説していく。
2021年一発目のセルタ戦を勝利で飾った我らがレアル・マドリード。 今年2戦目となるCAオサスナ戦は敵地のエル・サダルに乗り込んだ。 試合開始直前までリーグ2位につけているエル・ブランコは試合数は違うものの勝ち点1差でアトレティ[…]
基本フォーメーション
2015年にジダンが監督に就任してからは基本的に同じ布陣を起用している。
ってことでオサスナ戦も当たり前のように4-3-3だ。
4-3-3のフォーメーションは中盤の選手が機能するかどうかがかなり鍵となってくる。
つまり、中盤の選手のクオリティが高ければ高いほどこの布陣は有効となる。
というのも、理由は何個もあるんだが、このフォーメーションの大きなメリットを言うと、選手同士が三角形の関係を保てることでボールを保持することができる。
その為ポゼッションを高めたパスサッカーを繰り広げることができる。
現在マンチェスターシティで指揮をとっているもう一人のハゲグアルディオラ監督が愛用していることでも有名。
そんな4-3-3はオサスナ戦のように相手が引いて守ってくる相手にはもってこいの布陣だ。
そして、レアルの中盤はドイツ代表トニ・クロース、クロアチア代表ルカ・モドリッチ、ブラジル代表カゼミロの3人。
名前を言うだけで相手が怯んでしまいそうな3人だろう。
豪華すぎる3人をスペインでは総称してこう呼んでいる。
『エル・ブランコのルカゼミロース』
ってのはもちろん嘘だ。
パスをロボットのように捌きまくるクロースと何でも出来ちゃうモドリッチが中盤を支配し、少し相手がボールを持っちゃうものならカゼミロが潰してくれる。
どうでもいいけどカゼミロってマリオに出てくるウェンディに似てるよね。
うん、ほんっとどうでもいいね。
本題に戻るね。
そして、選手間の距離感がちょうどいいこともあって、一昔前に流行った3-5-2のサイドハーフのように無駄に走らなくて済むのも良いところ。
つまり、体力の消耗が少ないのもこのフォーメーションのメリットだということ。
おじさん化が進んでいると言われるレアルの選手達だが、この布陣なら無理せず賢くプレーすれば、体力を温存して持ち前の能力を最大限に生かせるってわけ。
理論上はね。
ジダンは指揮を取り始めた2015年当初から中盤の3人はクロース、モドリッチ、そしてカゼミロの3人を起用している。
つまり約5年ほど代わり映えしていないメンツということ。
長い間若手が台頭してこなかったこともあるだろうし、ジダンがやりたいサッカーをやるにはこの3人のクオリティに勝るものがないんだろう。
とは言ってもここ最近の布陣で変わった事といえば、サイドバックの2人だ。
豊富すぎる運動量を生かした攻撃参加が売りのメンディとウイングが本職で見た目中学生のバスケス。
ベンチには本職でスペイン代表のオドリオソラもいるし、守備的ポジションならどこでも出来るユーティリティさが売りのタコスナチョもいるがジダンが起用したのは何故かバスケス。
中学生が何故サイドバックで起用されるのか、何故ジダンが中学生を起用するのかについては絶賛勉強中だ。
緊急事態宣言中だからかな?
攻撃時におけるシステム変更や戦術
まず、攻撃の時の話からしていこう。
攻撃の時のレアル・マドリードは4-3-3から3-4-3にシステムを変更することが多い。
サイドバックの2人は高い位置を取り、センターバック2枚が広がりボランチの1人がその間に入る。
これは自陣でボールを持ってビルドアップを仕掛ける時、相手が2人でプレスをかけにきた場合でも数的優位を作ることができる。
そして、パスやキープ力に優れたインサイドハーフのもう2人がボランチの位置まで下りてくる事で優位なままビルドアップをすることができる。
その際、FW3人のうち真ん中の選手(おにぎり君ベンゼマ)がトップ下の位置まで下りてくることも多い。
これを「偽9番(フォルスナイン)」なんて言ったりもするが、FWで起用することにより「守備の負担を減らすので代わりに攻撃の時に自由にタクトを振るってもらって良いですか?」って感じ。
そしたらベンゼマは「ご飯ですよ!」ばりのテンションで「いいですよ!」って返事して活躍してくれる。
…僕は何を言ってるのだろうか。
ちなみに、バルセロナでやる気低下中のメッシとか今どこで何してるかも分からないセスク・ファブレガスなんかがこの「偽9番」の役割を担っていた。
我らがレアルで不動のセンターフォワードとして君臨しているベンゼマもそうだが、この役割をこなせる攻撃センスとテクニックがあるからこのシステムでも対応できる。
そしてもう2人のフォワードは裏に抜け出すなり、サイドに広がるなりしてボールをベンゼマから受ける。
ベンゼマはパスを出したらゴール前に全力疾走!
ボールが来る!
決める!
って訳だ。
ちなみにこの時もシャツはしっかりパンツにインしてある。
そして、攻撃時のシステム変更はもう1つある。
それが2-5-3システムだ。
これは相手が1トップの場合(状況的に1人しかプレスにくる可能性がない時)によく見られるシステム変更。
それがディフェンスは2枚(ラモスとヴァラン)で数的優位を保ってビルドアップを仕掛け、サイドバックは相変わらず高い位置。
中は安定の3枚(ルカゼミロース)って形だ。
中盤に人が増えるのでポゼッションするなら多い方がいいのはお分かりいただけると思うが、レアルはちょっと他とは違う。
通常、ボランチの選手がパスでリズムを作りながら徐々にビルドアップしていくのだが、レアルのボランチはカゼミロ。
カゼミロはレアルで替えの効かない選手ではあるが、如何せんビルドアップが上手くない。
いや、その…僕よりは上手い。
もっと言えば、そこらへんのJリーガーよりは上手いかもしれないが、欧州の舞台では所謂「取りどころ」である。
その為、通常であればカゼミロが中盤の底でパスを前後左右に捌くのだが、ジダンはカゼミロにビルドアップの役割を与えていない。
苦手なんやったら得意なやつにやらせた方がええやん。ってことだ。
ちなみにこれだけは伝えておくが…
ジダンは関西人ではない。
とまぁ、何回も言ってしまうがレアル・マドリードは個々の能力に長けた人たちの集まり。
パスが得意なクロース、キープ力抜群のモドリッチがいるのであればそいつらに任せればいいのだ。
オサスナ戦でもカゼミロの周りをクロースとモドリッチが行き来してパスを引き出しては、長短のパスを織り交ぜながらポゼッション率を高めていた。
あまりにもオサスナが引いて守るので時折モドリッチはクロースに底を任せて前線に上がり2-4-4みたいな陣形になっていた時もあった。
とにかくモドリッチは何か打開しようとめちゃくちゃ走り回っていた。
おっさんのくせに相変わらず無尽蔵のスタミナを持っている。
相手のDFとボランチの間のハーフスペースに入り込もうとモドリッチを含めた前線4人がタイミングを見てパスを受けようとするも、相手の真ん中の守備は非常に堅く、ブロックとブロックの間(DFとMFの間)ではなく、どうしてもブロックの外で受ける羽目に。
つまり、受ける位置があまりにも低い位置になってしまいゴールから遠い位置でのプレーとなってしまう。
結局、この日は効果的な策が見出せず、サイドから放り込むという単調な攻撃が多かった。
オサスナの戦術に見事ハマってしまった形だろう。
残念ながらこの日は得点は生まれなかったものの、90分を通してドンっ!と引いて守るオサスナに対してレアルのサイドバックは高い位置を取り、積極的にサイドから攻撃参加を狙っていた。
これがジダンがバスケスをサイドバックで起用した理由なのかもしれないと踏んでいる。
でも僕はまだジダンについて勉強する。
どうやったらあんなにニット帽が似合わないのか!
守備時におけるシステム変更や戦術
そして、守備の時もシステム変更をして対応する。
4-3-3でレアル・マドリードのようなフォーメーションを敷くチームのシステム変更としては2パターンある。
それが4-5-1(4-1-4-1)と4-4-2だ。
オサスナ戦では基本的に4-4-2のシステムを敷いて相手の攻撃に備えていた。
4-4-2の守備の目的は前からプレスをかけて相手をサイドで追い込むこと。
サッカーをしてる人はよく「ハマった!」って言うが、オサスナ戦でも事あるごとにカゼミロが大声で叫んでた。
(あ、ウェンディ検索してみた?)
そんな4-4-2システムだが2つのタイプがある。
僕はそれをフラット型・ダイヤモンド型と呼んでいる。
まぁ…みんなそう呼んでいる。
4-4-2フラット型というのはこんな感じ。
そして4-4-2ダイヤモンド型というのがこんな感じだ。
どちらも前線からのプレッシングをかける時に有効なシステムだが、ダイヤモンド型の方が「ハマったー!」ってなりやすく、フラット型は相手にロングボールを蹴らせるようなイメージ。
というのもダイヤモンド型は、センターバックを前線2人でマークし、トップ下の位置にいる選手が相手のパイプ役となるボランチをマークすることでサイドにボールを運ばせることができる。
つまり、サイドに追い込んで追い込んでパスの出しどころをなくさせる。
いわゆる「ハマったー!」である。
相手は適当に前に蹴るか、引っ掛けてくれる。
そしてフラット型は、横一列にDFとMFが並んでいることで大きなブロックを平行に2枚敷くことができる。
相手のセンターバック2枚を前線2枚でマークし、相手のサイドバックを両サイドがマーク、真ん中のボランチを二人がマーク、相手のサイドハーフはサイドバックがマーク。
上手くプレッシャーをかければ出しどころがなくなり、相手は適当に前線に蹴らざるを得ない。
そしてカウンターアタックを仕掛けたいオサスナのようなチームにとっては、4-4-2フラットの距離感が良いこともあり、スペースが中々空かず、カバーリングなども潤滑に行えるので守備に安定感をもたらしてくれる。
つまり、相手のカウンターアタックにもしっかりと対応できる安定感があるということ。。
しかし、90分間試合をしていると、レアルも1回落ち着いて飲みにでも行こう!と言わんばかりに前からプレッシングをかけない時間帯もある。
そんな時は、4-5-1(4-1-4-1)のシステムを敷いて相手をしっかり迎え撃つ。
これはシンプルにウイングの2枚が中盤の位置まで落ちて守備に参加するというもの。
相手サイドバックが高い位置を取ればそれにしっかりついていく形を取る。
オサスナ戦は左サイドハーフの選手が攻撃の中心だったということもあり、アセンシオのサイド(レアルの右サイド)を崩そうとする動きが多かったのもあって、アセンシオは攻撃に中々参加できない時間帯もあった。
相手の攻撃の中心選手が守備が本職じゃないバスケスと対峙してるなんてチャンスでしかないんだから、そりゃ狙われるよねって話。
逆に相手の右サイドはそこまで果敢に攻め上がる感じもなく、アザールが守備にめちゃくちゃ追われるということはあまりなかった。
なので、4-5-1のシステムを敷いてても自然と4-4-2になってたってのが個人的な印象。
だからこそ、守備の負担がそんなにないアザールにはもっと仕事して欲しかったんだけど。
太ってる場合じゃないんだけど。
時折、果敢な攻め上がりを見せていたメンディとバスケスらの上がった後のスペースを狙われていたが、カゼミロ、クロースあたりがしっかりカバーリングをしていたことで問題なしだった。
本当カゼミロは守備の時はどこでも現れるなって感じ。
俺様を抜いてミロって感じだった。
ジダンはこの攻撃と守備のシステム戦術をしっかり落とし込めているわけだが、だからこそ慣れたメンツで戦いがちなのかなとも思った。
ジダンにラモスとカゼミロとモドリッチとかが「今は決まったメンツで戦いたい」って直談判したらしいからね。
今ベンチで燻っている中盤の若手は、このシステム変更を自然に且つ臨機応変に対応できるようになるとジダンからの信頼を得ることができるかもしれない。
選手交代時のシステム変更や戦術
ジダンは5人使える交代枠のうち3人の交代枠を使用した。
それが、エル・ブランコのマヒア(魔法)ことイスコ(#22)、パハリート(小鳥)ことバルベルデ(#15)、猛獣(ビースト)ことマリアーノ(#24)だ。
決してこの3人はお笑いトリオではない。
この3人が投入された時レアルのシステムはこのように変更されていた。
この3人に求められていたことは比較的明確だっただろう。
バルベルデは守備と前への推進力を生かした攻撃参加。
個人技があるイスコはドリブル突破などで相手のブロックを崩す。
マリアーノは裏への抜け出しと、再度前線からのプレスを仕掛けてほしい、といった感じだったかと。
2トップになったことで、ベンゼマが落ちてボールを受ければその裏にスペースができる。
3トップだと少し距離があるが、2トップであればチャンスは広がる、ってのが狙いだっただろう。
しかし、この日のオサスナはなかなか手強かった。
ゴールネットを2回揺らすもいずれもオフサイドの判定。
結局、枠内に放ったシュートはわずか1本。
雪で覆われたピッチだっただけにやりにくそうではあったが、クロースが「雪は言い訳にできないンゴ!」ってインタビューに答えてたね。
我らがレアル・マドリードなら確かにもっとやれたはず。
基本フォーメーションと戦術はそんなに変わっていない
ここまで我らがレアル・マドリードの基本フォーメーションから始まり攻撃時・守備時・選手交代した時のシステム変更について解説してきた。
ジダンが就任して以来、チャンピオンズリーグ3連覇をする時期も含めて基本的な戦術は変わっていない。
強いて言えば、クリロナがいた時代といなくなった時代では役割は変わって来ているのかもしれないが、中盤の3枚を見てもわかる通り、動き回りボールを支配できるクロースとモドリッチ、攻撃的な選手が多いチームでバランスを取るカゼミロはここ数年変わっていない。(か、カゼミロース…)
そこでここ数年言われているのがカゼミロの代役いない問題。
攻撃的な選手に関してはレアルは有望株をたくさん取り揃えているが、カゼミロのポジションをしっかりこなせる選手というのは本当になかなかいない。
レアルも困ってるだろうが、我々もカゼミロが疲労で怪我するのではないか、怪我した場合にボコボコにやられてしまうのではないだろうか、と不安になる。
フル稼働させてでも、ジダンのサッカーをやるにはどうしてもバランサーで守備のできるカゼミロが必要だ。
相手ももちろん我らがエル・ブランコとの対戦ともなると研究して来ているだろうが、最終的なクオリティを決めるのはFWの3枚。
ベンゼマは今のところ不動の存在ではあるが、ロドリゴ、ヴィニシウス、マリアーノ、アザール、アセンシオなどプレースタイルの異なる有能な選手がゴロゴロいる。
研究されている状況でいかに変化を付けられるか、アタッキングゾーンでボールを持った時に何ができるかを頭を張り巡らしながらどんどん掻き回して欲しいし、出来る選手たちなはず。
ジダンが求めてるサッカーをいかに体現できるか、ラ・リーガ、カップ戦、CLをどのように戦っていくのか。
これからも非常に見物である。
Hala Madrid!