我らがレアル・マドリードのホームスタジアムでもあるサンティアゴ・ベルナベウ。
知らない人も多いが、サンティアゴ・ベルナベウはエル・ブランコの黄金時代を築いたFWで、レアル一筋でキャリアを終えた選手だ。
つまり、ワン・クラブ・マン。
レアル・マドリードでは中々見ることのできないワンクラブマンだが、現在レアル一筋を貫いている選手がいる。
それがスペイン代表ナチョ・フェルナンデスだ。
絶対的なスタメンでもないナチョが長年レアルでプレー出来ている要因はなんなのか?
今回はレアル・マドリードを愛するワン・クラブ・マン、ナチョ・フェルナンデスのプレースタイルや特徴についてとことん解説していく。
ナチョ・フェルナンデスのプロフィール
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本名 | ホセ・イグナシオ・フェルナンデス・イグレシアス(José Ignacio Fernández Iglesias) |
国籍 | スペイン |
生年月日 | 1990年1月18日(31歳) |
身長 | 180cm |
体重 | 76kg |
利き足 | 右 |
ポジション | DF(SB/CB) |
背番号 | クラブ:6/代表:4 |
着用スパイク | adidas Predator Freak Low |
経歴 | レアル・マドリードB(2009-2013)/レアル・マドリード(2011-) |
年俸 | €7,384,000(9億3038万4000円)/週給€142,000(1789万2000円) |
現在のレアル・マドリードで唯一のワン・クラブ・マンという事もあって、ファンからの信頼も厚いナチョ・フェルナンデス。
絶対的なスタメンという訳ではなく決して目立つ存在ではないが、レアルに欠かせない存在としてチーム内での立ち位置を確保している。
家庭は生粋のレアル・マドリードファン
そんなナチョの生まれはスペインの首都マドリード。
今では当たり前のようにナチョ・フェルナンデスと言っているが、上の表を見てもらっても分かる通りこれは実は本名ではない。
あだ名のようなもので、「渡辺」が「なべ」と言われたり、「ロナウド・デ・アシス・モレイラ」が「ロナウジーニョ」ってなるのと同じだ。
スペイン語圏では「イグナシオ」は「ナチョ」と呼ばれることが多いんだとか。
今では周りからもみんなナチョ・フェルナンデスという呼び名で親しまれている。
そんなナチョの幼少期はシャイで物静かな性格だったそうだ。
ただ、現在スペイン1部のカディスCFでプレーをしている同じくサッカー選手の弟アレックスの面倒をよく見ていたといいい、面倒見のいい長男だったそうだ。
マドリードで生まれた事もある、両親はもちろんレアル・マドリードファン。
自然とレアル・マドリードというチーム、そしてサッカーが好きになっていったそうだ。
ナチョと弟のアレックスは地元のサッカチーム「ADコンプルテンセ」に所属し、このチームで彼らは持っている才能を十分に披露することになった。
トライアウト合格と糖尿病の発覚
そんな彼らの夢は、地元のビッグクラブ我らがレアル・マドリードでプレーすること。
ADコンプルテンセで数年プレーし、着実に能力を磨いていたナチョはある大きな決断をする。
それがレアル・マドリードの下部組織のトライアルを受けるというもの。
両親にも励まされながらナチョは念願のレアル・マドリードのトライアルを受け、見事合格。
ナチョのサッカーキャリアは順調に進んでいった。
しかし…
下部組織に加入してから1年後、ある大きな病気が発覚してしまう。
それが糖尿病だ。
本来はレアルユースとしてトーナメントに行くはずだったが病院に行ったと明かすナチョ。
当時、初診の医師からは「もうサッカーは出来ない」「サッカーができる日々は終わった」とまで言われたそうだ。
レアルのユース(下部組織)に入ってから2年、彼にとってこの言葉は絶望のどん底に突き落とされたような、そんな感覚だったという。
しかしその後、担当の内分泌学者のラミレス医師に出会うと「サッカーを辞める必要は全くない」と正反対のことを言われた。
糖尿病の治療には、肉体的な運動というものが必ず必要な為サッカーを辞めなくて良いとのこと。
彼は他の人よりも健康や休息の取り方などに3倍は気を遣っているとは話すが、その事でより責任感が増したと語っている。
実はこの糖尿病と闘いながらサッカーを続けていると明かしたのは2016年11月のUEFA(欧州サッカー連盟)のインタビューにて。
それからは、レアルでトップレベルの戦いを行なっていたナチョは糖尿病で戦っている人たちを大きく勇気づけ糖尿病のクラウドファンディングやイベントなどにも積極的に参加している。
当時診てくれたラミレス医師はそれからずっとナチョを担当しており、レアルユースの多大なサポートもありナチョは病気を患いながらも着々とサッカーで実力をつけていった。
マドリーで信頼できる選手に成長
2011年、ホセ・モウリーニョはナチョを現在ユベントスでプレーするモラタなどと共にトップチームに昇格させることを明言。
しかしトップチームの層は厚く、主にカスティージャ(Bチーム)でプレー。
2011-2012シーズンはチームキャプテンとしてセグンダディビジオンで優勝。
そしてナチョの弟アレックスも同時にユースを卒業し、何の縁か同じ日にトップチームデビューを果たした。
その後のナチョは着々と出場試合数を増やしていき、サイドバック、そしてセンターバックで監督の要求に見事答える働きぶりを見せた。
当時の主力選手だったぺぺやラモスやヴァランの怪我が増えると、その穴を埋める形でナチョが出場。
2016-2017シーズンは公式戦39試合に出場すると、2017-2018シーズンは公式戦42試合に出場するなどジダンはナチョを必要不可欠な存在として起用し続けた。
2018-2019シーズンと2019-2020シーズンはルーカス・バスケスがサイドバックのポジションをこなすようになった事や、デビュー以来大きな怪我をしてこなかったナチョが怪我をしてしまった影響もあり、試合出場数は30試合(2018-2019)、10試合(2019-2020)と少なくはなったが大事な一戦でナチョを起用するあたりを見ているとナチョへの信頼度はかなり高いと言える。
今シーズンもサイドバックのバックアッパーとして試合に出場している。
ナチョはスペイン代表でも同じような立ち位置を確保していて、U-16、U-17、U-19、U-21世代の代表に選ばれた経験があり2013年にA代表デビューを果たした。
A代表デビューを果たしたチリ戦では何の縁かセルヒオ・ラモスとの交代でデビュー。
現在22試合に出場し1得点という記録を残している。
ナチョは代表に選ばれるくらいの選手。
それでも我らがレアル・マドリードでは必ずスタメンという訳ではない。
ただ、監督が要求したことをこなすことができるレベルにあること、スタメンに定着しないからと腐らない、サッカー以外にも大きな問題を起こさずサッカーに真摯に向き合っているあたりはナチョがサポーターにも愛される理由なのではないだろうか。
ナチョ・フェルナンデスが使用中のスパイク【アディダス プレデター フリーク】
そんなナチョ・フェルナンデスが着用しているのがadidasのプレデターフリークLow。
このスパイクはなんと言ってもアッパー表面に搭載されている「デーモンスキン」が特徴の1つで、このイボイボが高精度のボールコントロールとボールに強い回転をかけることに貢献してくれる。
収縮性と圧着性が高い素材を採用している履き口は足とスパイクががっちりとホールドされる履き心地を提供し、軽量化されたスプリントフレームがグリップ性を高めてくれるのでスプリントにも効果を発揮してくれる。
ナチョは守備の選手としてどの方向にも対応できるグリップ力は大事になってくるが、サイドバックをやる際にはやはりセンタリングをあげる機会が出てくる。
そんな時にこのスパイクで鋭い回転をかけるボールを蹴りたいという意図もあってこのスパイクを選択しているのだろう。
ナチョ・フェルナンデスのプレースタイル
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レアル・マドリードでワンクラブマンはサンティアゴ・ベルナベウ(1911-1927)、チェンド(1982-1988)、マノロ・サンチェス(1983-2001)の3人しかいない。
そしてその道を着々と歩んでいるナチョ・フェルナンデス。
レアルのようなビッグクラブでずっと生き残るのは簡単なことではないのは分かると思うが、ナチョの何がそんなに凄いのだろうか。
あまりナチョについて知らない人も多いと思う。
ということで、ここからはナチョのプレースタイルと特徴について書いていく。
僕が思うナチョ・フェルナンデスを語る上で欠かせないポイントは以下の通りだ。
- ユーティリティさ
- ミスの少ない堅実な守備
これらに尽きる。
それでは一つずつ解説していこう。
守備におけるユーティリティさ
ナチョを語る上で絶対に欠かしてはいけないポイントがナチョのユーティリティさについてだ。
ナチョの本職はセンターバックだが、左右のサイドバックでも高い評価を得ている。
つまり、守備のポジションであればどこでも守る事が出来る、というのがナチョの強みでもあり特徴。
「便利屋」という表現が良いのかは分からないが、ナチョの起用法を見ていると「便利屋」という表現がしっくりくる。
というのも、ナチョは絶対的なスタメンではない。
センターバックには闘将でキャプテンのセルヒオ・ラモス、トップレベルのスピードを誇るフランス代表ラファエル・ヴァランがいて、サイドバックには不動の右サイドバックとして君臨するダニ・カルバハル、左サイドバックには攻撃センス抜群のマルセロや身体能力と高いパス精度を誇るメンディがいる。
しかし、レアルはビッグクラブであるが故に年間を通して試合数がかなり多い。
シーズンを戦い抜くには選手の休養も必要になってくるし、怪我による離脱をする選手も出てきてしまう。
そんな時に、レアルの救世主になるのがナチョだ。
スタメンで出ていた選手が離脱すると控えにいる選手が出るというのは普通ではあるが、ナチョの素晴らしい所は出場した際にチームのパフォーマンスレベルが一切下がらないということ。
つまり、控えの選手だからと言っていつものレアルのサッカーが出来なくなるなんてことがない。
これがナチョが長年レアルというチームから信頼を得ている要因だろう。
またマルセロのような攻撃的なサイドバックが多いレアルにおいて、攻撃と守備のバランスを保つことが出来るナチョの存在はでかい。
攻撃的なサイドバックでは攻撃した後にうしろのスペースを突かれてしまう事が多い。
しかしナチョは良い意味でも悪い意味でも攻撃に比重を置かない。
つまり、攻撃的に行くか守備的に行くかという戦術を考える時に、ナチョというカードが手札にあることで守備に重点をおく選択ができる。
稀ではあるがサイドハーフで起用された事もあるくらいだ。
これは監督としては間違いなく嬉しい点だと思う。
そして、センターバックのセルヒオ・ラモスが警告をもらうカードコレクターでもあることから出場停止になる事もあるが、ナチョがいれば問題ない。
本職のセンターバックで淡々とその役割を果たすことができる。
ナチョがいるだけで戦術の幅が広がるし、主力選手に万が一のことがあってもナチョがしっかりと穴を埋めてくれる。
この守備におけるユーティリティさがナチョ・フェルナンデスの強み、そして特徴だ。
ミスの少ない堅実な守備
そしてナチョを語る上で欠かせないのがミスの少ない堅実な守備をする選手だということ。
これも監督にとっては嬉しいポイントだろう。
ナチョは守備能力が基本的に高い。
相手のパスをカットするインターセプトの出足は速いし、対人プレーも粘り強く守ることができる。
決して一発で相手に飛び込んだり、足をすぐに出してかわされるというような事はなく、相手の出方をしっかり見極め、確実にボールを奪取する。
仮に一瞬外されたり、かわされたとしてもその後も必死に食らいつく。
この「負けない守備」「粘り強い守備」を試合を通して集中してこなしてくれるのがナチョの特徴だ。
ポジショニングや状況判断能力が優れているし、足元の技術もしっかりあるのでディフェンダーとしては申し分ない能力を持っている。
先ほどから言っているように、ナチョはレアルの絶対的スタメンではない。
だが、だからと言って能力が低い訳では決してない。
ちょっとラモスとヴァランの身体能力が異常なだけ。
ナチョはレアル一筋を貫いてくれているが、他のチームに行ったら確実にスタメンを張る事ができる守備レベルにある。
そんな選手がレアルのベンチに居てくれて、何かチームが緊急事態になった場合に水準以上のプレーをしてくれるのはレアルにとってかなり心強いだろう。
ナチョといえばあのゴール
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そんな堅実な守備とディフェンスならどこでも守ることができるナチョだが、同僚のセルヒオ・ラモスのようにバンバン得点を決めるタイプではない。
だが劇的なゴールを決める事もある。
そんな数少ないゴールの中でも最も印象的なゴールが2018年ロシアW杯の対ポルトガル戦で決めたゴールだ。
ナチョといえばこのゴール!と言っても過言ではない。
2018年ロシアW杯のスーパゴールと言うとフランス代表のパヴァールが決めたゴールが取り上げられることが多い。
それもそのはずで、パヴァールが決めたゴールは大会ベストゴールに選ばれている。
だが、そのゴールはナチョが決めたゴールと似たようなもの。
パヴァールのゴールよりナチョのゴールの方がインパクト、シュートスピード共に素晴らしかった。
しかも勝ち越し弾。
個人的にはナチョのスーパーボレーが大会ベストゴールだ。
正直、パヴァールが決めたゴールもかなりスーパーだし、一位になるのもなんの文句もない。
決勝トーナメントという一発勝負の中で同点弾を決めたゴールということもあり、ナチョのグループリーグのゴールより価値が高いんだろう。
しかもナチョが決めた試合は、その後クリスティアーノ・ロナウドに決められて追いつかれてるし。
だが!
ベスト10にも選ばれてないのだ。
これが不思議でしょうがない。
大会ベストゴールじゃないにしても10位以内には入ってもおかしくないゴールだった。
ナチョ、君が決めたゴールは少なからず僕みたいなサッカーファンは熱狂したよ。
ちなみに、大会ベスト10ゴールは以下の通り。
- フランス代表DFベンジャマン・パヴァール(フランス対アルゼンチン)
- コロンビア代表MFフアン・フェルナンド・キンテーロ(コロンビア対日本)
- クロアチア代表MFルカ・モドリッチ(アルゼンチン対クロアチア)
- ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル対スペイン、3点目)
- アルゼンチン代表FWリオネル・メッシ(ナイジェリア対アルゼンチン)
- ロシア代表FWデニス・チェリシェフ(ロシア対クロアチア)
- ベルギー代表FWナセル・シャドリ(ベルギー対日本)
- ナイジェリア代表FWアーメド・ムサ(ナイジェリア対アイスランド、2点目)
- ポルトガル代表FWリカルド・クアレスマ(イラン対ポルトガル)
- ドイツ代表MFトニ・クロース(ドイツ対スウェーデン)
現在レアルに所属してる選手が2人もランクインしてることは、レアルファンからしたら喜ばしいことではあるが…
ナチョはレアルでキャリアを終えて欲しい
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監督としてもチームとしてもベンチに居てくれたらかなり心強い存在となっているナチョ・フェルナンデス。
そのユーティリティさと堅実な守備能力は最強の「便利屋」だ。
- 守備のユーティリティさ
- 攻守のバランスを保てるポジショニングと状況判断
- ミスの少ない堅実な守備
- インターセプトが得意
- 粘り強い守備
ドリブルやパス能力、コントロール力に関してはレアルの中では普通。
スペインの代表に選ばれるくらいなので一定水準以上なのは明らか。
だが、ナチョの強みはさっきから書いているように、ユーティリティさ、堅実な守備、そして献身性だ。
誰かの穴を埋める形で出場し、良いパフォーマンスをしてもなかなかスタメンに定着できないがそれでも決して腐ることなくレアルへの忠誠心を見せてくれている。
もちろん本人からしたらスタメンに定着したいという気持ちはあるだろうが、センターバックでもサイドバックでも一定の出場数を得ているということで、他チームがこぞって欲しがったにも関わらずレアルに残留を表明してくれた経緯もある。
リヴァプールにはスティーブン・ジェラードという誰もが知っている選手がいた。
絶対的なスタメンでキャプテンとして率いた彼とはナチョは少し違うかもしれない。
けど、レアルファンはナチョの働きを知っている。
下部組織からずっとプレーしているナチョはエル・ブランコのサッカーを知り尽くしている。
もちろんプレー面だけではなく、新しく加入した選手の世話役もすることができ、精神面でもナチョはチーム内で大事な役割を担っている。
レアルの本拠地でもあるマドリードで生まれたナチョ。
ここまできたらレアル・マドリード一筋でサッカーキャリアを終えて欲しい。
これからも数々の激闘を迎えるであろうエル・ブランコ。
我々はナチョの存在に感謝する日が幾度となくあることだろう。