我々サッカーファンは年間に何試合もリアルタイムで、もしくは録画した試合を観戦するだろう。
そして、勝利した応援しているチームに対してこんな言葉を言った経験はないだろうか?
「良いサッカーしてた。」
この、「良いサッカー」という言葉はサッカーファンがよく言うセリフランキングでも3本の指に入るセリフだ。
果たしてこの「良いサッカー」とはどのようなサッカーのことを言うのだろうか?
勝った試合全てに「良いサッカー」って言ってない?
僕は「良いサッカー」というのはチームによって違うと思っている。
ということで今回は、マドリーにとっての「良いサッカー」とはどんなサッカーなのか?について書いていきたい。
そもそも「良いサッカー」って?
無類のサッカー好きである僕は、マドリーの試合をシーズンを通してほぼ全て観戦している(勿論マドリー以外の試合も見るけど)。
そして試合を見た後にサッカーの全てを悟ったかのように
「今日マドリー良いサッカーしてたなー」
って言ったこともある。
もしかしたら、そういう内容のツイートをしている可能性が180%だ。
もし、あなたがサッカーファンになりたてだとしたら、とりあえずこのセリフを言っておけば、
「〇〇くんってサッカー詳しいんだね!きゅん」
ってなるかもしれない←
でも僕は少し意地悪だ。
「いやー昨日の試合良いサッカーだったなぁ」
なんて言った人がいたら、
「良いサッカーってどういうサッカーのこと?(真顔)」
って聞いてしまうだろう。
そんな誰でも言えるセリフで女子にモテるお前らが決して悔しいからではない
というのも、僕は多くの日本人が言っている「良いサッカー」の定義に違和感を感じるからだ。
日本人はスペイン代表のサッカー(戦術)が好きって人が多い。
ポゼッション型のサッカーで、人が流動的に動いて狭いエリアでもショートパスを繋ぎながら相手の守備陣形を崩していく、あのサッカーだ。
イニエスタ、シャビ、ブスケツ、ビジャなどなどスペインを代表する選手達が繰り広げた「ティキタカ」と呼ばれるあのサッカー。
ティキ・タカ(名詞 英:Tiki-taka、スペイン語:tiquitaca)複数のパスコースを作りながらショートパスをつなぎ、ボールを保持したままゴールへの道筋を作るプレースタイル。
💙 @FCBarcelona ❤ pic.twitter.com/FpkhpuuGJb
— ラ・リーガ (@LaLigaJP) December 1, 2018
確かにあんなサッカーは見てるこっちまで気持ちよくて爽快だ。
しかも、スペイン代表がEUROやワールドカップを制した時代は本当にそのサッカーが最強に感じた。
では、そのサッカーを得意とするスペイン代表やバルセロナが試合に挑む時のチームの目的は何か?
ティキタカをすること?
ボール支配率を70%近くにすること?
後ろから細かく繋いでビルドアップすること?
ノンノンノンノン!
違うっ!
試合に勝つことだ!(大声出してごめん)
ここで他の例を出そう。
先日、日本代表対モンゴル代表の試合があったが(結果は14-0で日本勝利)、正直日本は良いサッカーをしたと思っている。
それは相手が格下だったとはいえ、森保監督が掲げている「流動的に動いて素早いプレッシングとコンパクトで縦に速いサッカー」を体現する事ができていたからだ。
これは、ある意味スペイン代表と似ている部分があるので(厳密には少し違うけど)「良いサッカーだった」って言う人が一定数多い理由も分かる。
しかし、モンゴルが合宿中の練習から試合まで、全員守備で日本の攻撃を0点に抑え込みセットプレーの1本を決める!ってサッカーを練習してきてたとしよう。
どんなに攻め込まれていても、どんなにミスが多くても、決まったゴールが日本のオウンゴールでもモンゴル代表からしたらそれは「良いサッカーだった」って言えるだろう。
つまり、試合に勝つための手段として、バルセロナやスペイン代表はティキタカをしているだけであって、全てのチームにおいて「ティキタカ=良いサッカー」を表している訳ではない。
ここまで、グダグダ書いてきているが、要は言いたいことはそこ。
日本人がよく口に出して言う「良いサッカー」が全て「バルセロナやスペイン代表のようなサッカー」を表しているのでは間違いだ。
試合後のインタビューでこんなセリフを聞いたことはないだろうか。
「試合に勝つことは出来たけど、内容的にはひどい内容だった」
こういう、監督だったり選手だったりのコメントを見ると、彼らにとっての良いサッカーは出来ていないんだという事がわかる。
逆に、
「良いサッカーはしていたけど負けた」
ってコメントも聞く事がある。
このようなコメントを聞くと、「いや、良いサッカーしてても勝たないと意味ないけど。」って思うのと同時に「その『良いサッカー』ってのを修正して次頑張ろ!」って気持ちにもなる。
つまり、クラブにはクラブのスタイル、その試合に向けて練習してきているサッカーというものがある。
それがそのクラブにとっての「良いサッカー」であり、ポゼッションサッカーを全て「良いサッカー」っていうのは違うよね?もうやめませんか?って話である。
え、俺ウザい?←
マドリーにとっての良いサッカーとは?
と、ここまで「何でもかんでも良いサッカーって言うのやめませんか?」って事をつらつらと書いてきた訳だが、今回僕がこの記事を書いているのは全てマドリーのことをもっとみんなと考えたいからだ。
我らがレアル・マドリードは世界でも屈指のタレントが集まっているチーム。
勝利が絶対使命の常勝軍団でなければならないエル・ブランコだが、ただ勝つだけではなく、攻撃的で華麗で美しいエレガントなサッカーを体現した上で勝利する事が求められる。
常に最強でなければいけないというレアル・マドリードのクラブ哲学といってもいいだろう。
そしてその哲学が、マドリディスモ(マドリー主義)と呼ばれる必勝の精神を持つ事を当たり前にさせている。
そんなマドリーのスタイルといえば、相手からボールを奪った後の縦に速い超高速カウンターアタックだ。
マドリーといえば縦に速い高速カウンター!
ヴィニ、君が必要な理由がここにあるんだよ。覚醒してくれたまえ。 https://t.co/9cXMlEwlEU
— Dale Blanco(ダレブランコ) (@daleblanco10) July 9, 2021
相手を自陣まで攻め込ませて相手の綻びが出た瞬間にボールを奪ったら、あとは前線の選手の突破力で一気に相手ゴールに襲いかかる。
最近ではベイル、ベンゼマ、ロナウドの強力3トップがたった3人で決め切っちゃったり、ディマリアやカカやエジルなどの中盤の選手まで一気に駆け上がるシーンはマドリディスタであれば何回も見た事だろう。
まさに攻撃的でエレガントなサッカーだ。
このように、相手がどんどん攻めてくれれば守備もそれなりに堅いマドリーであれば堅守速攻型のサッカーで試合を決め切ってしまう。
例えば、2020-2021シーズンのCLでリバプールと戦った時のような戦い方は良い例だ。
ここ11試合で負けなしの我らがレアル・マドリード。 リーグ戦では首位との差を縮めチームの状態もかなり良いと言える。 そんな中今回迎えた試合はUEFAチャンピオンズリーグのベスト4をかけた戦い。 あいまみえるのは2018年の[…]
リバプールといえば、守備時は高い位置からガンガンプレスをかけて来てボールを奪取するゲーゲンプレスを仕掛け、攻撃はショートカウンターで一気に仕留めてしまうようなチーム。
Liverpool’s pressing chains preventing Arsenal from building from Leno: pic.twitter.com/VIfal487Xk
— Omar (@topimpacat) September 30, 2020
THEクロップのチームだ。
しかし、逆にいえば、ポゼッションが得意ではないしポゼッションされるのも得意ではない。
そこで、リバプールにあえて苦手なポゼッションをさせて自陣に侵入させて、膨大に空いた裏のスペースをマドリー得意のカウンターで仕留めちゃおうって戦術の試合だった。
勿論、マドリーがボールを奪取したらリバプールは得意のゲーゲンプレスでボールを奪いに来る。
が、そこはポゼッションもやろうと思えば出来てしまう我らがマドリー選手達だ。
モドリッチやクロースやベンゼマらがそのプレスをするすると交わして、ゲーゲンプレスを無効化する。
その試合では何度も何度もリバプールの裏のスペースをつき、相手もそれを警戒してかサイドバックがうまく攻撃に参加できないまま試合が終了した。
これぞまさに「良いサッカーをしてた」って言っても良い試合運びだった。
少し前まではロナウドやベイルのような快速を飛ばす超攻撃型アタッカーが君臨していたが、現在その役割をこなせる選手はいるのか?
そう思った人もいるだろう。
勿論、最適な人物がマドリーにはいる。
ヴィニシウス・ジュニオールだ。
🇧🇷 #ヴィニシウス の止められないドリブル 🔥#UCL | @realmadridjapan pic.twitter.com/AxIYP4vfDB
— UEFAチャンピオンズリーグ (@UCLJapan) March 25, 2021
お得意の「決めへんのかい」ボケである(笑)
ヴィニシウスは最後の精度にはいまだに問題を少し抱えているが、ご覧の通り爆発的なスピードと相手を切り裂くドリブルを持っている。
このシュートシーンに持ち込む際に関わった人数はわずか2人だ。
これがマドリーの「良いサッカー」の究極レベルでもあり、パターン化する事が出来る戦術の1つだと思う。
勿論、これはヴィニシウスの単独プレーではあるが、これにベンゼマ、ロドリゴ、バスケスなどが絡んでいくことも十分に考えられる。
ということで、相手を自陣に引きずり込んでからのカウンターアタックが決まれば、マドリーが「良いサッカーをした」って言われるべきサッカーをしている時と言えるだろう。
これぞまさに真骨頂!
攻守に不得意がないマドリー
Real Madrid- The art of the counter attack
— Real Madrid Analysis (@rmdanalysis) July 5, 2021
しかし、かつてバルセロナに所属していたシャビはマドリーのことを「理由なく勝つ」と言っていた。
そしてSNSなどでよく見かけるワードとして「やっぱマドリーはマドリーだった」って言葉も見かける。
実は、これがマドリーが「良いサッカーをした」って言われるべきサッカーをしてる時なのではないかと僕は思っている。
というのも、先ほどはカウンターが決まる時が良いサッカーだと話したが、レアル・マドリードを相手に引いて守る姿勢を貫くチームが多いとなると話は別だ。
特にリーグ戦ではマドリー相手にどんどん攻めてくるチームは、バルセロナ、アトレティコ・マドリー、セビージャくらいか(ベティスとかもかな?)。
他の試合では、マドリーの攻撃に備えて引いて守るチームがほとんどだ。
となると、クオリティの高い選手が揃っているマドリーがどうしてもボールを保持する時間が増えてしまう。
では、マドリーはボールを保持して攻撃する戦い方は苦手なのか?
答えはNOだ。
クロースやモドリッチを中心にベンゼマやバルベルデやサイドバックの選手も含めたさまざまな選手がボールに絡み、流動的に動いてチャンスを作り出す事ができる。
では、ボールを取られた際の被カウンターに弱点があるのか?
答えはNOだ。
これに関してもカゼミロを中心としてモドリッチやクロースなど中盤の選手が前線の選手と連動して高い位置からプレッシングを掛けることもできる。
では、ポゼッションをされた時の守備が苦手なのか?
答えはNOだ。
センターバックのラモスやヴァラン、2020-21シーズンであればミリトンやナチョを中心に可変システムを多用しながら攻撃をしっかり受けてきた。
なんならそれが出来なければ、マドリーの十八番でもあるカウンターアタックは発動出来ない。
つまり、マドリーというチームは攻撃時も守備時も苦手な分野がないのが特徴の1つだ。
80 seconds of possession. 28 passes..
Real Madrid in the Champions League..
— Real Madrid Analysis (@rmdanalysis) July 13, 2021
ポゼッションはバルセロナほどではないかもしれないし、被カウンターもリバプールほどではないかもしれないし、被ポゼッションもアトレティコ・マドリードのように強固で組織的ではないかもしれない。
ただ、どれも苦手ではなく高い水準でプレーする事が出来るチーム、それがレアル・マドリードだと思っている。
だから、リバプールは得意のゲーゲンプレスをかわされたら一気にピンチになるし、バルセロナも攻撃でポゼッションできなくなったら守備時にスペースが出来始めるし、アトレティコも堅守後のカウンターを逆にひっくり返されたら組織が崩れてしまう。
つまり、相手のチームスタイルがどうであれ、相手によって戦い方を変える事が出来るのがマドリーの強さであり、マドリーのサッカー。
ポゼッションサッカーでもなんか知らないけど勝てちゃうし、引いてカウンター狙いのサッカーをしてもなんか勝っちゃう。
カウンターアタックももしかしたら世界一ではないかもしれないけど、十八番って言えるくらいトップレベルだから点が入っちゃう。
どんなに押されてて敗戦ムードが漂ってても一発で試合を決めちゃうプレーができる。
戦術にこだわって何回シュート打っても点が入らない!って時も、予想もしてなかった選手が予想しなかった形でゴールを決めて勝利してしまう。
それがマドリーが「良いサッカーをした」って言えるサッカーなのかもしれない。
メンディの意味不明ミドルシュートのように…(笑)
Ferland Mendy made the back of the net sing against Atalanta 🎶pic.twitter.com/znuN8lZiY9
— Goal (@goal) March 2, 2021